下北沢のまちびらきイベント「下北線路祭」リポート

変貌を遂げたシモキタの体験参加型お祭りイベントの全容 
 5月28日(土)、29日(日)に開催された下北沢の街びらきイベント「下北線路祭」に参加致しました。あまり類を見ない、大がかりな都心の街イベント。そこで何が行われていたのか、その全容をレポートします。

 小田急線の東北沢駅から世田谷代田駅間、地下に潜って間もなく10年。その中間「下北沢駅」を中心に、小田急電鉄はこの線路跡地、全長約1.7㎞の「下北線路街」に次々と個性豊かな施設を建設してきました。
 2022年5月28日に最後の施設がオープン。ついに全面開業を迎えることとなり、その記念として開催されたのが2日間に渡っての「下北線路祭」。「下北線路街」13のそれぞれのエリアで、さまざまな仕掛けを体験しながら、街ブラを楽しむ体験参加型イベントです。

 街のあちらこちらに出店などがあり、さながら神社の夏祭りの大きな街バージョンといった感じです。さらに、専用のアプリ『まちのコインキッタ』をスマホなどにダウンロードすれば、スタンプラリーのような形で参加でき、指定された線路祭のポイントを巡り、QRコードを読み取るというミッションをすべてクリアすると豪華景品が当たる福引にも参加できます。
 今回はすべてのミッションをクリアすることはできませんでしたが、キッタアプリが指示する世田谷代田からスタートするコースに沿って、線路街を歩いてみました。
   
     
 世田谷代田駅すぐに位置する「世田谷代田キャンパス」。
 東京農業大学のアンテナショップや地域密着の農家直営ショップなどがあり、地域の人々の憩いの場にもなっています。

 線路祭では、新鮮な珍しい食材を直売したり、農大ならではの日本酒の試飲もできるほか、テラス席で気軽に飲食も。
 3枚1500円のチケットが販売されていました。出店のイカ焼きは現金だでは700円のところ、チケットでは1枚買えるので200円もお得。ついつい買ってしまいます。

   
  続いての店舗は世田谷代田駅前にある、カフェ「カルディーノ(KALDINO)」。 
 世田谷代田が発祥の「カルディ」が運営するこだわりのコーヒーと奥沢の人気ベーカリー「クピド!」のパンを販売するテイクアウト専門店です。

 今回の線路祭では、「下北線路祭」先着20名限定のパンセットが登場。の「珈琲カレーパン」「ミルクメロンパン」「クロワッサン」「パンドミ」がセットで1000円。かなりお得感です。

※世田谷駅前では、「なりきり駅長写真撮影会」が行われていました。小田急線の駅長に扮しての撮影です。お子さまではないのでスルーさせていただきました。
 


   世田谷代田駅から下北沢駅へと向かう線路街の遊歩道を歩くとすぐ見えてくるのが「温泉旅館 由縁別邸 代田」。箱根の温泉が世田谷でも楽しめると人気の施設です。

 開発段階ではインバンド客を見込んでいたそうですが、コロナ禍で外国人客はほぼゼロに。それでも国内客だけで予想以上に人気を博し、ほぼ70~80%の稼働率だといいます。

 「緑に囲まれた雰囲気の場所でのんびりランチを食べたい」という需要が高く、予約が取れないほどだそうです。
 確かに、この辺りは「ここがシモキタ?京都のよう」と錯覚するほどで、散歩にも良い場所です。

 「由縁」ではこの線路祭のために、フロントロビーにて下北沢の観世流能楽師「梅若万佐晴(うめわかまさはる)」氏の協力により能装束や能面などの特別展示を行っていました。
 梅若家紋と由縁別邸ロゴをモチーフにした記念品も販売されていたとのことですが、売り切れてしまったのか、残念ながら見当たりませんでした。

 いずれにしても、普段は客でなければ入りづらい由縁に、イベントの参加ということでずんずん入っていけたのが楽しい。
     次に、そのまま整備された線路街の遊歩道を歩いていくと、仁慈保幼園に着きます。

 この仁慈保幼園では、「まちに であって あそぼう」のコンセプトで、子どもたちが遊べるスペースができていました。
 下北線路街で集めた「まちのカケラ」で遊べるそう。鉄道好きにはたまらない、ロマンスカーのおもちゃもありました。 
  仁慈保幼園の向かいは「BOUNS TRACK」です。天気も良くたくさんの人で賑わっていました。

 ここでは新鮮な野菜や果物からつくるコールドプレスジュースが人気の「Why_?下北沢」による、美味しく、身近に体験できる「食のマーケット」を開催していました。
 オープンスペースでいただく冷たい飲み物とお食事はとても気持ちが良い。
 この一角だけ、路地裏に迷い込んだファンタジータウンのような特別感を覚えます。

 「BOUNS TRACK」の下北沢側の入り口スペースでは、ブックマーケットが開催されておりました。移動書店「BOOK BUS」も登場し、やはりたくさんの人が訪れていました。 

 「気になる本と出会える」とのことで、珍しいディープでコアな本がいろいろ出ていました。
 ショップのスタッフさんとそのこだわりを話したり、見ているだけでも楽しいことでした。
   
    ブックマーケットのすぐ隣が、高校生から社会人まで約90名が居住する新しい教育寮「SHIMOKITA COLLEGE」です。

 ここでは線路祭の2日間限定で、カレッジ生活体感ツアーを開催していました。
 普段は立ち入ることのできないカレッジ生活を垣間見ることができるということもあり、家族連れが多く見られました。
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  カレッジの通りを挟んだその先は、今回の小田急線線路跡地最後にオープンした「NANSEI PLUS」のアートギャラリー「SRR Project Space」や広場「ののはら」です。 

 「ののはら」は小田急電鉄と世田谷区が共同で整備した広場で、都心の駅前にはなかなか見あたらない異空間として誕生しています。
 なるべく多く緑を入れたいという地元の強い思いが詰まった緑いっぱいのスペースで、「これまでのシモキタには無かった新しい風景になることを期待している」そうです。
   
 
  「ののはら」の管理を担う「一般社団法人シモキタ園藝部」の拠点ともなっている園芸ショップ「ののこや」。地域で採れたハーブとハチミツを使ったハーブティーのティースタンドと園芸関連の物販を行っています。
 線路祭では「古樹屋」として、循環をテーマに廃棄されてしまうストーリーのある植木鉢をレスキューし、アップサイクルして販売していました。
 目の前に広がる「ののはら」の風景をのんびり眺めながら、地産のハーブティーやアイスクリームなどをいただけるほっこり空間。思わず駅前にいることを忘れてしまいそうな、ゆったりした時を過ごすことができそうです。
  今回新しくオープンしたアートギャラリー
「SRR Project Space」は、シモキタと親和性の高いアートに着目した施設。ギャラリーは2棟あり、どちらも無料で見ることができるといいます。


 一つは中に入ることができる体感型のギャラリー。初回展示は、既存のイメージやオブジェクトを起点にしたインスタレーションやパフォーマンスを手掛ける作家の田村雄一郎氏の作品で、下北沢に関連したストーリー性のあるものです。
 ???不気味な動物の手と、奥にアップライトのピアノが1台。これのどこが下北沢?と思います。
 いきなりデンと置かれている毛むくじゃらの手に、思わずギョッ。実はこれ猿の手で、その昔下北沢にあったジャズ喫茶で飼われていたという猿の「Q」をモチーフにしているそう。
 奥のピアノは自動演奏されているのですが、これは実際の猿が弾いた音。確かに子どものいたずらした音のような不協和音が絶えず聴こえてきます。それが空間全体になんとも不思議なパフォーマンスを産んでいます。 
 田村氏の展示期間23ヵ月間ということですが、1ヵ月ごとに猿の手が動いていくらしいです。興味津々!猿の「Q」と、小田急の「急」をさりげなくかけていたりして遊び心が満載。
 実はこのギャラリーにはもう一つ大事な道具があります。それは電車になくてならないもの。これが猿の手と関わっていくらしい。それが何になるかはお楽しみ。まるで謎解きのような新感覚アート。興味がある方はぜひ見に行ってみてください。
   
     もう一つのギャラリーは、外からショーウインドー的に見るタイプ「Rebirth of the Qool(クールの再生)」という田村氏の作品。エアコンと室外機が同室に配置され、クールが循環されているというアートです。

 エアコンからは4℃のアクセサリーが垂れ下がっていて、結露ができればハートに涙がついているようになるそうです。
その横には田村氏の作詞があって「みなの思い出の中の甘酸っぱい下北沢」をイメージしたストーリーだとか。

 夜にはライトアップされ、また昼とは違った雰囲気が楽しめそうです。
 仕事帰りにふと立ち寄って疲れを癒したり、カップルで愛を語り合ったりするのにもオシャレかもしれません。
  ここらでさすがに疲れたので、「NANSEI PLUS」2階にあるクラフトビール店「TDM1874」にて線路祭限定ビール「下北ホワイトIPA」をいただきました。 
 このビールの特徴は大麦麦芽に小麦を使用した優しい味わい。IBUが45もあるのに(日本で一般的に飲まれているラガービールのIBUは大体15~20程度)、心地よい苦味とスムーズな口当たりが爽やかで飲みやすく、とても美味しい。
   
 「NANSEI PLUS」1階の駅前広場では、「食のマルシェイベント」が行われていたり、2階の映画館「シモキタ・エキマエ・シネマK2」では下北にゆかりのある映画作品を上映。テフラウンジの「KITASANDO COFFEE」では、専用アプリ「COFFEE App」からオーダーすると、店舗で出たコーヒーの豆かすを利用した消臭剤とオリジナル巾着のセットを無料配布するなど、さまざまなイベントが行われていました。  
 また隣接するシモキタウエでは、フラワーショップ「ルコネル」によるミニブーケ作りのワークショップが開催されたり、「ヤキトリてっちゃん Talking GORILLA」ではスペシャルゲストを迎えてのDJイベントが行われたりしていました。

  本当に線路街全体がお祭りの露店巡りをしているようで、ワクワク感がずっと続きます。
 世田谷代田からスタートしてかなり歩いてきましたが、コースはまだ半分。
 ようやく「NANSEI PLUS」を出て、「線路街 空き地」へと向かいます。


 人気のキッチンカーが大集結する「線路街 空き地」では、音楽ライブが開催されていました。大勢の人が青空の下、音楽に耳を傾けながら冷たいビールや美味しい食事を楽しんでいます。これぞシモキタ!「みなご機嫌」。 
   

 ライブの横では「シモキタ未来のアイデアボード」が設置され、「夜市」や「ビアガーデン」「DJイベント」など、さまざまなアイディアが寄せられておりました。
    空き地の駐車場を利用して、ダイダイ染めのワークショップも開催されていました。シミが消えず着られなくなってしまったTシャツなどが鮮やかに生まれ変わるそうです。
 「線路街 空き地」から通りを渡るとそこは「reload」になります。

 ここからまた雰囲気がガラッと変わります。

 どこか海外のリゾート地の路地裏を思わせるような、ハイセンスな雰囲気となっています。
 

                         @小田急提供
 
    「reload」をずんずん進んでいくと左手に見えてくるのが、都市型ホテルの「MUSTARD HOTEL」。

 こちらもインバンドの宿泊客を見込んでいましたが、コロナ禍でほぼ国内客のみ。それでも先月は過去最高の売上高だったと言います。
 全60室あり、特徴的なのが、いかにもシモキタらしく、全室にレコードプレーヤーが設置されていること。ホテルにストックされているレコードも1000枚以上あり、自分の部屋で懐かしいアナログレコードの音色が好きなだけ楽しめるそうです。

 時間貸しもしているのでリモートワークにも良さそう。泊まるだけでなく「シモキタをより楽しむための場」として利用できるカルチャーホテル。利用用途はさまざまなようです。

 このホテルの1階は宿泊以外の客も利用できるカフェ「SIDEWALK COFFEE」や焼酎BAR「くらげ」が併設されていて、ふだんからいつも多くの人が利用するたいへん人気のスポット。

 カフェにはオープンスペースがあるので、犬連れでも利用できることもあってか、線路祭イベントとして「イヌとヒトの関係をフラットに」する「FLAFFY」によるペットアイテムなどが販売されていました。FLAFFYでは飼い主が着なくなったヒトの服をイヌ用に作り直すサービスも行っています。大人気で予約が殺到しているそうです。 

 この他「reload」では「チェキ」によるフォトコンテストが行われたり、ヨガを楽しみながらランニングに繰り出すイベントが行われたりしていました。やはり1日ですべてのイベントに参加するのは難しいです。たっぷり2日は要する内容でした。
 
 
 【取材後記】
 世田谷代田から東北沢まで全1.7㎞を「下北線路祭」のさまざまなイベントを見ながら歩いてみました。ちょっとした小トリップ&お祭り気分でした。
 下北沢の「開かずの踏切」時代を知っている筆者からすると、同一の街とは思えない変貌ぶりですが、改めて「下北線路街」の個性やその魅力を再発見できたように思います。
 それぞれの施設に個性があり、ここでしか出会えない店舗や施設に、「シモキタらしさ」や「シモキタカルチャー」を感じることができました。 
 
 昔とはまったく別物のようでいて、どこか古い歴史や文化を感じさせてくれる、新しいのに懐かしいようなそんなステキな街になっていると思います。
 小田急電鉄の星野社長によると、「全面開業した今がゴールではなく、ここからがスタート」ということですので、「下北線路街」の一ファンとしては、この街が今後もどう発展、成長していくのか、楽しみに見守っていきたいと思っています。
―――――取材ライターK(シモキタ生まれシモキタ育ち)
                                                      写真全て@2022/5/28
【下北沢線路街MAP】
  
     




















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