「樋口一葉と錦絵」
歌川派の浮世絵師楊洲周延が描いた『別れ霜』挿絵と錦絵の世界

 「別れ霜」挿絵 左から第2回~第5回

 樋口一葉生誕145年を記念して、「樋口一葉と錦絵 歌川派の浮世絵師 楊洲周延が描いた『別れ霜』挿絵と錦絵の世界」展が、台東区立一葉記念館にて開催されている。
 展示では、男尊女卑という時代背景なども含めた一葉のおおよその生活や短い人生の流れを理解できる。
 
 一葉記念館入口

 小さな頃から一葉は飛び級で進学をするほどだったが、女性は家庭の中へという時代、母親からは「女性には学問は不要」と進学の道を断たれてしまう。一葉の文才を認めていた父親は、一葉に和歌を学ばせた。理解者である父の他界、そして多額の借金を背負い、豊かだった暮らしは一変し、母と妹を養うために、歌塾の手伝いや針仕事などで収入を得、駄菓子屋を経営などにも着手するがあえなく廃業。歌塾の姉弟子の三宅花圃が小説で収入を得ているのをみて、小説家になると決意をし、奮闘をしていく。

 しかしその経験が一葉に多大な影響をもたらし、執筆活動に専念し始めると短期間に傑作と呼ばれる作品をいくつも生み出したが、24歳の時に肺結核で死去してしまう。傑作を生み出した期間は「奇蹟の14ヶ月」と呼ばれた。

 展覧会で見られる「別れ霜」という作品は、一葉の初期の作品で、ロミオとジュリエットを彷彿させる悲恋の物語だ。当時発刊されていた改進新聞に連載されたがその全15回分を見ることができる。改進新聞は長らく所在不明だったが平成21年に発見され一葉記念館に寄贈されている。
 びっしりと印字された中にある一枚の挿絵(浮世絵師の楊洲周延の作)が、一話分の中の重要な部分を描いて、文字だけでは想像できなかった情景ーー仲睦まじい二羽の鳥、策略を練る怪しい表情、すれ違ってしまう2人……が印象づけられる。
 また、一葉の新聞掲載に深く関わり、恋人関係にあったという噂の小説家・半井桃水への恋慕の気持ちが登場人物に反映されている。

 困窮当時の経験が物語の中で活かされ、作り手側の一葉の心情などの説明もされていて、作品と一葉への関心が一層深まる展覧会だ。  (西川)
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会 期 2017年6月25日 (日)
 休館日 月曜日(祝休日は開館、翌平日休館) 
開演時間 9時~16時30分(最終入館16時)
会 場 一葉記念館 展示室2(台東区竜泉3丁目18番4号)
アクセス 地下鉄:日比谷線「三ノ輪」駅 徒歩10分 他
入館料
一般300円(200円)、小・中・高校生100円(50円)
 ※入館料( )は20名以上の団体料金
問合せ 一葉記念館ー〔TEL:(03)3873-0004

















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