『小田急自然ふれあい歩道』。この冊子､小田急ユーザーはご存知だろうか。小田急電鉄が小田急沿線の自然を取り上げ､いくつかのみどころスポットを選んで散歩コースとして設定した道を紹介している。小田急線各駅に配布されており、ホームページでも各コースについて参照できる。コースはそれぞれ相当程度の長さで設定され、自然を眺めながらのウォーキングや軽い運動にはちょうどいい。
 今回私は､この中全長6.7kmの「千歳船橋駅コース」をまわってみることにした。小田急線千歳船橋駅を中心に､合計８か所のみどころスポットが設定されている。このあたりは私の地元で､長らく生活範囲として見知った場所だ。紹介されている順にまわるのがセオリーだろうが、家から行きやすい近所から歩いてまわることにした。
まず初めに希望ヶ丘公園へとたどり着いた。休日のよく晴れた午後とあって、たくさんの人が訪れ、思い思いの時間を過ごしている。広場では親子でキャッチボールをする姿も多くみらた。
公園をひととおりぐるっとまわったのちに、蘆花恒春園へとむかう。地域小学校のとりくみもさかんに行われているようで、母校の小学校の生徒が種まきをした花壇をみつけた。そういえば自分も学校の授業の一環でここを訪れたなと、ほんの少し前のように感じる小学生時代を思い出した。そんなことを連れの母と会話しながら、いつの間にこんなに時間が過ぎたのだろうとハッとさせられた。しばらくこない間に園内は整備され、ドッグランやヤゴの保護観察池など、記憶にない施設やスペースができていた。先ほどの希望ヶ丘公園とは変わって、犬を連れて歩く人が本当に多い。同じ区立公園でもこんなにも印象が変わるものかと、少し目を丸くした。
そこからせたがや百景に指定されているらしいガスタンクを横目に、住宅地の合間を歩く。見知ったはずの道も、こうして改めて眺めてみるとずいぶん面白い。家々に違う趣きがあって、その分さまざまな家庭や生活があるのだなあとしみじみ感じた。街並みを眺めながら自分たちが過ごしてきた街についてあれこれ思いをめぐらせる。コース内に設定されたみどころスポットとして神社やお寺にも足を運び、おまつりの時くらいしか訪れたことのなかったそれぞれの場所が、普段どんな雰囲気なのか、初めて触れることになった。
いくつかのスポットをめぐりだいぶたった頃になって､コースの中間地点となる千歳船橋駅までたどり着き､天祖神社へとむかった。あまり行ったことがないと思っていた天祖神社は実は､小さな頃よく遊びに来た場所だった。千歳船橋の方から向かったこの神社と､幼少期に経堂方面から訪れていたそこは私の記憶では一致しておらず、神社をぐるっと通り抜けたところで初めて気づかされた。全然別のものだと思っていた記憶の中の二つの神社が繋がって、同じ場所でも見る方向が違うだけでこんなにも違ってみえるのか、物事を捉える視点が違うとこんなにも印象が違うものかと、突然胸ぐらを掴まれたような、そんな新鮮な驚きがあった。
その後に通った最後のスポット、烏山川緑道を抜けながら、記憶の中にある小さい身体でとらえた世界と、成長していま過ごしているこの世界の見え方も、知らぬ間に大きく変化していたんだなとしみじみ感じた。秋の夕暮れにつつまれ歩きながら、地元や自分の姿を再発見するようであった。
今回かかった時間は約一時間半。自然に触れることもさながら、いつもの道を自転車や車でなく徒歩で通ることによって、季節の変化を身に染みて感じ、いかに空が美しいか、この街でいかに時間が過ぎていったのかを噛みしめる好機となった。
また、歩く道すがら地元についてやそれにまつわる思い出などについて交わした言葉がとても感慨深い時間となり、ずいぶんよかったなと思った。
きっとあなたの地元にも、気づかなかったことを再発見させてくれる場所があるだろう。小田急沿線の駅にはどこにもコースが設定されているはずなので、天気の良い日にはちょっとお出かけ、してみてはいかがだろうか。一人でリラックスするもよし、運動にと足を運ぶもよし。時間があるならば、家族とともにでかけ、ゆったりと有意義な時を過ごしてはどうだろうか。きっと素敵な一日になることだろう。
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