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「ガラス★高橋禎彦 展」
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花のような 2004 東京国際近代美術館 |
これまで高橋は、キャスト(鋳造)や被(き)せガラス、フューミング、サンドブラストなど、さまざまな技法を駆使してガラスの魅力を引き出してきました。しかし、なんといっても高橋の作品を特徴づけているのは、その高い技量と表現力で定評のある宙吹きによる制作でしょう。ふっくらとしたフォルムはいかにも軽やかで、ちょっと押したら変形しそうな滑らかな曲面でつくられています。でも実際の工程のなかでは、高温で溶けたガラスに触れることはできません。熱く、ドロドロとしたガラス種を金属の竿の先に巻き取り、少しずつ空気を吹き入れながらイメージをかたちにしていきますが、ガラスが冷え固まるまでの時間はごくわずか。ユニークで、見ているとウキウキするようなフォルムには、そんな制作工程のライブ感が息づいているのです。
こうした高橋の仕事には、長らく戦後の工芸界で検証されてきた“器物vs.オブジェ"という対比は当てはまらないようです。一枚の皿や一個のコップを生みだす作業のなかで見出した造形の根源は、自由な創作にしっかりとした骨格を与え、枠組みに囚われない感性は、器のフォルムをより洗練させました。或は、形式による分類はもはや意味をなさないことを、高橋の挑戦は教えているのかもしれません。
本展では高橋禎彦が手がけた1980年代から最新作までを並べ、工芸における造形思考の“進行形"をご紹介します。
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