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「続々オールド・バンチ〜カルメン戦場に帰る〜」
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2006年12月6日〜13日『続オールド・バンチ〜男たちの挽歌〜』より |
「俳優業に復帰したい」と2005年10月、自身の所有する6劇場のひとつ、「劇」小劇場で40数年ぶりに舞台を踏んだ本多劇場・本多一夫さん(写真後列中)。若い頃役者を目指していたがその夢を捨てきれずに1982年に本多劇場を創設。現在あわせて6劇場のオーナーとして演劇の場を提供、多くの来街客を呼び込み“演劇の街下北沢”を定着、街を活性化させたことで広く知られている。
その本多さんがこの2月1日〜28日に開催される「第19回下北沢演劇祭」に、“俳優”として本多劇場の舞台にたつ。
タイトルは『続々オールド\バンチ〜カルメン戦場に帰る〜』。演劇界の重鎮たちによる高齢者劇団「パラダイス一座」の最終公演。メンバーがついに国境を越えてミャンマー(ビルマ)の戦場に…奇想天外の「戦争とニッポンの現在」が大胆に描かれる。
公演日は2月8日〜15日、演出は40年もの長きにわたりアングラ、小劇場で活躍し、「演劇界の楽道を見つけた」という流山児(写真最前列)。
本多劇場は観る側、演じる側のことを考えた造りで、観客にとっては芝居との一体感を感じることが出来る劇場だといわれる。本多さんの劇場哲学の果実ともいえるのだが、「俳優が一番面白い。これからも俳優をやっていきたい」という思いの強さをしてその哲学を切り離しては観ることができないのではないか、目が離せない。
続『オールド・バンチ〜男たちの挽歌〜』をめぐって
林 カヲル
2006年12月、ザ・スズナリにおけるパラダイス一座の旗揚げ公演『オールド・バンチ〜男たちの挽歌〜』(作=山元清多、演出=流山児祥)は、年の瀬の思わぬ拾い物だった。大して期待していなかったのだ。パラダイス一座とは流山児祥が結成した活動三年限定の高齢者劇団である。91歳(年齢は2007年当時)の戌井市郎を筆頭として、年齢順に瓜生正美、中村哮夫、本多一夫、そして最年少72歳の肝付兼太。観世榮夫と岩淵達治は映像で参加した。本多が元俳優の劇場経営者で、他は演出家。
俳優も兼ねる肝付を除けば、演技は50年ぶりという本多も含め、舞台経験はほとんどないに等しい。これは裏で長く活動してきた演劇人たちが表舞台に立って見ました、という所詮はお遊びの企画だろうと高を括っていた。しかしこの気分はいい方向へ裏切られる。あれほど無条件の楽しさを味わえるのはまれだ。しかし、いい舞台というのとは少し違う。そもそも、あれは演劇だったのだろうか。
たとえば彼らが登場する場面では、全員黒のスーツで舞台前面に居並ぶ。5人、悪漢、勢揃いとなれば、白浪五人男を思い出す。そして劇の最後で、お約束のように七五調の台詞で五人男が演じられる。しかしこの引用自体が面白いのではない。白浪物の雰囲気が彼らを包むと5人の立ち姿という絵面が輝くのだ。極端にいえば彼らが動く、語る、笑う、それだけで何やら心が浮き立つ。
そうなるのも彼らの内に観客を惹きつけるものがあるからだ。彼らはそれぞれの役であると同時に彼ら自身でもある。観客は暗殺者のリーダーが同時に92歳の戌井市郎であることを忘れることはない。彼らはしじゅう台本からはみ出して自身を露出する。といっても素の、高齢の彼らではなく、年齢を持たない俳優としての彼らだ。その時彼らを支えるのは一種の芸であり、ほとんど演芸大会に近づく。
これは演劇だろうか、と書いたのはこういう理由であった。
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