「年をとるにつれて知能が低下する」という年齢神話は、従来、わが国では極めて強かった。
しかし、アメリカの心理学者グリーンは、1972年の知能加齢的変化の研究において、「知能は65歳ぐらいまで低下しない、こうした考え方に根拠はない」、と結論づけている。
グリーンによると、知能は「言語知能」と「動作知能」の2つに大別される。ここで言語知能とは、語い、一般的理解、知識などの「知的能力」を指す。一方、動作知能とは、手の器用さなどの「運動能力」をいう。
調査では、言語知能は25歳ごろから65歳ぐらいまで上昇している。一方、動作知能は40歳ごろからゆるやかに低下するが、その低下率は65蔵ぐらいまではごくわずかである。この結果、知能は全体として、65歳ぐらいまで低下しないことが明らかになった。
かなり高齢になっても知能が低下しないということは、医学における脳の研究でも裏付けられている。朝長江徳博士の研究によると、大脳には約140億個の神終細胞があるが、20歳以降は1カ月に10万個ずつ減るという。それにもかかわらず、適齢期で知能がよく保たれているのは、経験や学習によって神経の樹状突起が発達し、神経回路が維持されているからだという。この研究によれば、知能は、使えば使うはどよくなるわけである。
アメリカ医学界の権威、ロバート・バトラー博士も「人間が絶えず自己啓発を続ける限り、知能は高齢になっても衰えないどころか、むしろ高齢期にもずっと上昇を続ける」と述べている。また、バトラー博士によると、知性、判断力、経験、洞察力が必要な仕事の分野では、70歳以上でも創造的な仕事ができ得る可能性があるという。確かに私たちの身の周りをみても、80〜90歳の高齢になっても、元気に仕事をしている人は多い。
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