燐光群私たちの戦争

作=マリオ・フラッティ(「Blindnes s「盲目」)
渡辺修孝(「戦場イラクからのメール」)
坂手洋二(「LOST IN THE WAR」)
構成・演出=坂手洋二
訳=立木樺子(「Blindnes s「盲目」)


 トニー賞を多数受賞したミュージカル『ナイン』や『橋』などの戯曲で知られる劇作家マリオ・フラッティは、2004年春、イラク戦争の現実を知り、溢れる思いを抑えきれず、上演の予定をたてるいとまもなく、短編戯曲『ブラインドネス(盲目)』を書きあげました。戦闘の負傷で盲目になった復員兵が、死んだ戦友の家族たちを訪ねる静かな物語です。渡米前の少年時代、イタリアのレジスタンスで活動していたマリオ氏自身の、戦争そのもの、イラク戦争とアメリカの現実に対する厳しい視線が込められています。
 この戯曲はハロルド・ピンターら演劇関係者に激賞され世界各国で上演に向けてのプロジェクトが立ち上がっています。マリオ氏からいちはやく戯曲の紹介を受けた立木が日本版演出家として坂手洋二を推薦、ただちに上演に向けてのプロジェクトが動き始めました。
 燐光群では、2004年7月、他の短編と組み合わせる形で、総合夕イトルは『私たちの戦争』として上演することになりました。

 坂手がマリオ氏と打ち合わせのため訪米中の4月、イラクで報道・NGOの活動をする日本人たちが拘束され消息を絶つという事件が起きました。その一人、渡辺修孝さんは、坂手も発起人の一人である「米兵・自衛官人権ホットライン」から、イラクでの自衛隊の活動を取材するために現地におもむき活動していました。

 『私たちの戦争』の別なパートでは、帰還した渡辺さんの報告をもとに、彼のイラクでの体験が描かれます(その内容は、社会批評社刊「戦場イラクからのメール」にもまとめられています)。日本の現実も描かれます。イラク戦争開戦時、公衆便所に「戦争反対」 と落書きしただけで拘留され、軽犯罪法ではなく器物破損罪に問われ、多くのものを失った青年。自衛隊宮舎に「派兵反対」のチラシを入れただけで不当に長期問拘留され続けた、基地反対の住民運動に携わる人々……。

 スペインでの鉄道への「テロ」事件。アメリカ軍のファルージャ攻撃による市民虐殺、イラクの刑務所での虐待。混迷する状況下、地上のどこかで今も誰かが殺し殺されている現実。イラクで行われている戦争に、私たちも関与させられているという事実。そのことに対してあまりにも無自覚な政治・社会のあり方……。『私たちの戦争』はいっけん皮肉な題名のようですが、シンプルにこの時代を浮き彫りにするものです。

 本公演はこの「戦争の時代」を背景にした『だるまさんがころんだ』に続く燐光群のオリジナル新作であり、 『CVR チャーリー・ビクター・ロミオ』 『ララミー・プロジェクト』等、 「日本に於けるドキュドラマ上演に実績をあげてきた」とされる燐光群の、新たな演劇による「ドキュメント」へのアプローチとなります。

 また、下北沢ザ・スズナリでの上演が、夏以降の欧米各国での上演に先駆けた『ブラインドネス(盲目)』のワールドプレミアとなります(ニューヨークでは7月末からシガニー・ウィーらが経営するソーホーの「フリーシアター」で上演、8月以降はヨーロッパ各地で上演される予定です)。

 マリオ氏をお招きしてのシンポジウム、講演などが予定されています。渡辺さんを招いたアフタートークも企画しています。
                        燐光群私たちの戦争 公演概要⇒












『マイソフトニュース』を他のメディア(雑誌等)にご案内下さる節は、当社までご連絡願います。
Copyright(c)1999-2002 Mysoft co. ltd. All Rights Reserved.