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「外付け方式の耐震補強金物(DSG)」 |
“潰れない家、倒れない家”を考え、安価な方法で家を守る「耐震補強金物」を自ら開発したNPO法人日本耐震防災事業団理事長・小口悦央さん(53)=写真。昨年7月26日宮城県沖の震度6以上の地震でその確証データの好成績が広く知られ、今やわが国の「建物耐震補強」の第一人者だ。
平成7年1月17日早朝。小口さんはテレビで大地震の一報を知る。神戸市に住む義兄家族に電話するも、つながらない。
3日後、一級建築施工管理技士でもある小ロさんが車で駆けつけた時に目にしたのは、つぶれているか傾いている建物と、愛する者を失った被災者の姿だった。幸い義兄家族は無事だったが、「惨状を目の前にしただ涙、涙。まさに言葉をなくすとはこのことでした。」
と当時を振り返る。
義兄の家の再建施工中、家を失った近隣住民からも相談を受ける。そのため単身で神戸に移り住み、2年半で23棟も手掛けた。
しかし代金を支払えない人も多く万策つきて帰京したが、“潰れない家、倒れない家”作りの情熱は一層深まった。
「阪神・淡路大震災でお嬢さんを亡くされ、『どうか、潰れない家を作ってください』と手をぎゅっと握りしめたお父さんの涙は忘れられませんよ。」
「約6000人の尊い命が失われその85%が建物や家具による圧死や窒息死だった。家屋倒壊を予防するには、既存の木造家屋の耐震補強こそが大切」と、小口さんは「外付け方式の耐震補強金物(DSG)」を開発。DSGとは専用金具を外壁に設置し、壁の増強や接合部と開口部の補強を行うもので、建物の強度を高め、直下型地震の揺れを軽減するのが特徴。安全かつ安価な方法で家が守れる。
確証データを得るために早稲田大学工学博士の田中弥寿雄教授の立ち会いで、鹿島建設の実験装置を使って実験を繰り返した。DSGを取り付けた家屋は震度6強でも倒壊しないと証明された。
“地震大国日本”として、建物の耐震補強は重要な問題。それを広めるために平成13年、NPO法人日本耐震防災事業団を立ち上げた。NPO法人日本耐震防災事業団がある板橋区は6割が木造住宅。このうち地震に耐えられない強度不足の家が3万6千棟あるという背景も立ち上げの大きな動機だった。
「今後は官学民が一緒になって『耐震構造のスタンダード化』や耐震構造建物には固定資産税相当分減額などの制度改革を、提案していきたい」と小口さんは話す。
昨年5月、宮城県沖を震源とする地震の発生直後、宮城県の男性(61)が無料耐震診断の結果、8台の倒壊防止システムを取り付けた。
その1カ月後の7月26日、宮城県を震度6以上の地震が一日に3回も襲ったが、棚の引き出しが移動した程度で済んだという。
システムを取り付けた県内14件の住宅すべて被害は無かった。
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NPO法人日本耐震防災事業団では、DSGのビデオを貸し出しており、無料耐震診断も行っている。問いい合わせTEL.03・3559・7221
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