去る9月20日、早稲田大学で開かれた地盤探査研究会で、NPO日本耐震防災事業団、斉藤憲一さんによる「木造住宅の耐震補強について」と題する講演が行われました。

 建物の耐震性については、被害の上限が天災で計り知れないことでもあり、斉藤さん或いは建築専門家の間でも難問のようですが、専門家としてのひとつの理想があるようです。建物の耐震性とは、地震等外力によって建物が変形するものを、その構造によるねばりによって復元させるということなので、「建物の骨格・構造体は、粘り強く柔らかい方が良い」というものです。

 しかしながら、この粘り強く柔らかい木造住宅は今、構造体の考え方を体系的に確立しえなかったためか、全く無くなってしまったのです。

 現行の在来工法による木造住宅は、建物を歪まない様に抵抗力を発揮させて地震や台風などの風圧に耐えるという考え方が基本となっている「剛構造」といわれる建物です。
 この木造住宅の耐震度は、建物周辺の地盤条件、床下部分、柱・梁・筋かい・桁等軸組、開口部の有無等壁の状況、…などの要因の総合評価で判定されますが、地震等の自然エネルギーの解明が充分なされていないことや、建物の耐久性を計るのに必要な建築材料の劣化の局所的変化が充分掌握できないことなど、その総合評価を大きく覆す要因を含んでいることもあると思われ、評価の結論付けするには難しい面があるようです。

 とはいえ、現実的には、建築基準法施行令や住宅金融公庫融資住宅の住宅工事標準仕様、その他(財)日本住宅・木材技術センターの発行する木造住宅耐震設計のポイント等に基づいた耐震設計計画など参考にでき、住宅建築に関わる技術者には適格な応用技術力が求められておりますので、一応の目安は得られるようです。

 倒れ難い家を建てるにはどこまで補強すれば足りるという際限がありませんし、現場の裁量に委ねられている面が多々あり、心もとないといえるようですが、大切なことは“いかにして建物の1階部分を潰さないようにするか”。極言すれば有事の際、人が逃げ切るまで建物倒壊に至らない、耐震性の限度ということになります。

 結局のところ、耐震性能に対する考え方をどこに設定するか、例えぱ「命だけ守れぱ良い」とすればよいのか、「建物の資産価値まで守りたい」とするのか、経済的に許される範囲内でその人の人生観にまで及ぶと、斉藤さんは話しておりました。


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