佐藤愛子展/世田谷文学館

 世田谷文学館では4月28日から6月10日まで、世田谷区在住の作家、『佐藤愛子展』を開く。
 作家・佐藤紅緑の父や詩人・サトウハチローの兄をモデルにした 「血脈」 で菊地寛賞を受賞した同氏の魅力を、原稿、自筆資料、愛用品など300点で紹介する。

 「文学少女でも小説好きでもなかった」 という佐藤愛子さんを、文学の道へ勧めたのは同氏の母だった。
 「戦争中に結婚をして、不幸な結婚生活をしているときに、父によく手紙を出しておりました。それを父が読んで、『あの子は文才があると、お父さんがそういっていたからまあやってみたらどうか』というふうに母がいったわけです。戦争未亡人が多い時代で、縫い物も、お茶も、お花も、ピアノも何もできないものですから、母も一生懸命考えてくれたんでしょうね。」

 その後、加藤武雄の紹介で「文芸首都」の同人となり、「商業主義の日本文学から新しい文学を生み出そう」 と夫となった田畑麦彦を発行元に 「半世界」 を出版。同人には窪田般弥、北杜夫、なだいなだ、宇能鴻一郎、川上宗薫らがいた。 ここに書いた作品が 「愛子」 で、「ソクラテスの妻」 だった。直木賞受賞後、「負債を返すために頼まれたものは何でも書きまくった」 という。佐藤さんの辛口の批評とユーモアは自己の体験から生み出されたものであり、共感する読者はことのほか多い。
 自伝的作品『愛子』 に始まり、『花はくれない』 では父・紅緑を、『女優・万里子』 では母をと、佐藤家の人々を描いてきた。

◆さとう・あいこ 作家。
 大正12年大阪生まれ。甲南高女卒。「文芸首都」の同人を経て、田畑麦彦らと同人誌「反世界」を創刊。
 昭和44年「戦いすんで日が暮れて」で第61回直木賞を受賞。
 山本健吉が「軽井沢版『三人姉妹』と評した『冬館』(昭和34年9月「文学界」)で文壇的出発をする。『ソクラテスの妻』(芥川賞候補)、『加納大尉夫人』(直木賞候補)などに続き、倒産後の家庭内の模様を戦争に見立ててユーモラスに描いた『戦いすんで日が暮れて』で直木賞受賞。その後『赤い夕日に照らされて』『愛子の小さな冒険』『ああ戦いの最中に』などユーモアとぺーソス溢れる作品群で人気を博した。49年「幸福の絵」で第18回女流文学賞。ほかに自伝的小説『愛子』、父の生涯を描いた『花はくれない 小説佐藤紅緑』『鎮魂歌』などがある。
 父は作家・佐藤紅緑、兄に詩人・サトウハチローがいる。31年より太子堂に居を構える。
 平成6年、風呂場で転倒してから、住み慣れた家を建て直す決心をし、現在、娘一家との二世帯住宅。 

◆代表作品◆
 直木賞を受賞した短編小説「戦いすんで日が暮れて」は、夫の事業の失敗と離婚といった実体験に基づき、「小説現代」に発表された。
 借金の取り立てと催促に翻弄される、とかく暗くなりがちなテーマを、主人公で小説家の妻と娘が、辛さや苦しさをユーモアで乗り切りながら前向きにたくましく生きる姿を描いている。
 この作品で、河野多恵子、田辺聖子らと並ぶ、押しも押されぬ女性作家としての地位を確立した。

佐藤愛子展
■会 期=4月28日〜6月10日
■休館日=毎週月曜日 (4月30日は開館、翌日休館)
■時 間=10時〜18時 (入館17時30分まで)
■会 場=世田谷文学館
       世田谷区南烏山 1−10−10
■交 通=京王線:芦花公園駅から徒歩5分
       小田急線:千歳船橋駅から京王バス 
       〔歳23系統〕千歳烏山行き 「蘆花恒春園」下車、徒歩5分
■観覧料=一般500円(400円)/高校・大学生300円(240円)
     小中学生200円(160円)/65歳以上・障害者250円(200円)
※( )は20名以上の団体料金
■問合せ=TEL.03−5374−9111(代)

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